瀧研合宿 スライド
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【背景】ビタミンB12(VitB12)欠乏の評価には血清VitB12値の測定が一般的だが、悪性貧血患者では抗内因子抗体の存在により偽性高値を示すことがある。今回、血清VitB12が著明な高値を示したものの、ホモシステイン値測定により診断し得たHunter舌炎の症例を経験したので報告する。
【症例】50歳女性。舌の疼痛、灼熱感、味覚異常を主訴に受診。47歳時にVitB12欠乏性貧血の既往あり。今回、胆石症の治療中に同様の舌症状が出現。血液検査でMCV 110 fl、血清VitB12 >4,000 pg/mLと高値を示したが、血清ホモシステイン 67.8 nmol/mL(基準値5-15)と著明高値を認めた。
【結果】上部消化管内視鏡検査で慢性萎縮性胃炎を認め、抗内因子抗体陽性であったことから悪性貧血とそれに伴うHunter舌炎と診断。メコバラミン投与により症状は改善し、ホモシステイン値も正常化した。
【結論】悪性貧血患者における血清VitB12測定では、抗内因子抗体の影響により偽性高値を示すことがあり、その際にはホモシステイン値測定が診断に有用である。
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【背景】近年、人口の高齢化に伴い高齢者潰瘍性大腸炎(UC)の手術移行例が増加している。今回、発症から約1ヶ月という短期間で緊急手術を要した高齢発症UCの1例を経験したので報告する。
【症例】73歳男性。腹痛、嘔気、血便を主訴に受診。下部消化管内視鏡検査でUC・全大腸炎型と診断された。5-ASA製剤による治療を開始したが4日後に重症化し、プレドニゾロン点滴静注を開始。一時的に症状改善を認めたものの、入院7日目に腹痛が増悪し、CTで結腸の著明な拡張を認め中毒性巨大結腸症が疑われた。
【手術・病理】大腸亜全摘、S状結腸粘液瘻、回腸瘻造設術を施行。切除標本では漿膜下層まで高度の炎症性細胞浸潤を認め、肛門側優位に潰瘍・びらんを伴っていた。術後経過は良好で31日目に退院となった。
【結論】高齢発症UCは非高齢者と比較して疾患活動性が高く、重症化した場合は早期の手術を考慮する必要がある。本症例は、適切な手術時期の判断により良好な転帰が得られた教訓的な一例である。
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【背景】降下性壊死性縦隔炎は頭頸部感染が筋膜間隙を通って縦隔に波及する重篤な疾患であり、25-40%の高い死亡率が報告されている。今回、食道穿孔を伴う降下性壊死性縦隔炎に対して頸部からのドレナージが有効であった症例を経験したので報告する。
【症例】71歳女性。3日前からの咽頭痛で前医を受診。開口障害を認め、喉頭鏡で咽頭側索から披裂部と喉頭蓋まで腫大を認めた。造影CTで頸部から縦隔まで膿瘍形成を認め、当院転院となった。
【経過】初診時、気管切開・人工呼吸管理を要した。第6病日に胸部痛が出現し、CTで縦隔膿瘍の増悪を認めた。同日、頸部からのドレナージを追加施行。第12病日の内視鏡で長径4cmの食道穿孔を認めたが、第20病日には自然閉鎖を確認。38病日に自宅退院となった。
【結論】食道穿孔を伴う降下性壊死性縦隔炎において、頸部からの適切なドレナージにより膿胸を予防し、食道切除を回避できる可能性が示唆された。本症例は早期の頸部ドレナージが良好な転帰につながった教訓的な一例である。
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